「……えっ、優斗?」

「あ、唄。久しぶり」

最初に静寂を破ったのは、山本 唄(ヤマモトウタ)。幼稚園時代からの幼なじみだ。

薄い栗色に輝くウエーブのかかった長い髪。目がぱっちりと大きくて、性格もいいと評判。結構可愛い方らしく、男子にも女子にも人気がある。

僕は唄の“本当の性格”を知っているから、唄の事はどうとも思っていないが。

そんな唄は、自分の席に座ったまま、開いた口が塞がらず、まじまじと僕を見つめている。

すると、唄の声が合図となったかのように、一斉にみんなが僕に駆け寄ってくる。あまりにいきなりだったので、僕は思わず後ずさりをした。

「おおー森岡くん! 一瞬誰かと思っちゃったよー」

「元気だったか? もう大丈夫なん?」

「優斗くん、入院中はどうだったの?」

みんなが楽しそうに、あれやこれやと僕に話しかける。というより、質問をしてくる。

その質問を、笑顔でさばさば答える僕。

「うん、入院してるときは退屈だったよ。クラスではどう? 何かあった?」

これは、入院しているときからちょっと気になっていた事だった。

すると、みんなが顔を見合わせ、女子はうーん、と困惑の表情を浮かべた。

そんな女子とは対照的に、男子はこそこそといやらしい目つきで笑いだした。