この時の私は、得体のしれない物にとりつかれていたに違いない。




「譲さん、結婚しましょう。」





じゃなきゃ私からこんな事言うはずがない。





「先に籍だけ入れて、ちょっとずつ一緒に住む準備をしません?」


「蜜姫さん………。」





譲さんの気が済むまで抱き締められた私は、婚姻届とボールペンを借り記入した。





印鑑は持ち歩いてないから、今日は出せないけど明日の仕事終りに待ち合わせをして、役所に出しに行こうと決めた。





「ああ……幸せだな。」





ボフンとベッドに倒れ込んだ譲さんが呟くのを聞いて、私もその隣に寝転ぶ。





「どうしようか。今日は帰る?それともこのまま………。」





私の左手を掴んだ譲は、自分の口元に持って行き指にキスをしてくる。





やっぱり私は何かに、それも複数とりつかれていたんだ。





譲さんに手を伸ばし、自分からキスするなんて絶対ありえないもの。