「……っ…」
声も出なかった。
目の前のヒロキが、ヒロキじゃないみたい。
だって、寝てる訳じゃないんだもん。
あたしの知ってるヒロキは、こんな寝顔じゃない。
1歩ずつゆっくりと、ヒロキに近づく。
なんで…。
「…居眠り運転が、突っ込んできたみたいなんだ」
悔しそうにうつむくユキトさん。
「ほんっとコイツ…バカだよなぁ」
そう呟いたあと、ユキトさんの鼻をすする音が部屋に響いた。
あたしの頬にも、気づいたら冷たい涙が流れていた。
「…ヒロキぃ…」
こんなことになるんなら、もっと話しておけばよかった。
こんなことになるんなら、今日だって見送ってあげればよかった。
もっともっと、愛してればよかった…。

