捕らえられた手首が心苦しくて、根負けしたと言わんばかりに静かに顔を上げた私。



「望未…」


「え、と…、はい」


その先にある扇情的な眼差しが、内心で尭くんを急に“オトコ”へ変化させる。


先ほどの不意打ちのキスを思い起こさせように、薄めの唇がゆっくり名前を紡ぐから。


いつものようには、とても茶化せる状況じゃない――



「・・・ッ」


すると手首にかかる僅かな重みが取れた瞬間、その手が私の片頬にそっと触れた。