菫さんという女性の姿はなく、祐くんは蘭さんへ優しい眼差しを向けていた。
彼女をエスコートするように丁重に乗せると、運転席へと乗り込めば。
そのままエンジン音を響かせ、人で溢れる銀座の街並みに溶けて行ってしまう。
「・・・っ」
私は本来の目的も果たせず、ソレを見届ける事しか出来なかった――
“ベンツのナンバー、自分の誕生日にした”
“はぁ?アンタどれだけ自分好きなワケ?”
“オマエだってスリー7のクセに”
“私のは願かけ。風船男と一緒にしないで”
“ひでーな”
“どっちもどっちだろ。なー、のん?”
“アハハ…、恭ちゃんが一番ヒドイよ”
柚ちゃんと祐くんと恭ちゃんとの、いつかの飲み会を思い出せば。
誕生日から分かる彼の愛車ナンバーが、なぜだか今日は憎らしく思えた…。

