ドアが開いた方へと駆け寄って来ると、ひとつ息を吐き出した彼に涙が溢れた。 「ありがとうございました」 車内で繰り広げた会話が鬱陶しかったらしく、淡々とお釣りをくれて去ったタクシー。 「アホ女…」 その場に残されシンと静まり返った中で、気づけばギュッと抱き寄せられていた。 目黒川沿いに立つ立地からか、夏の終わりを告げるひんやりとした風が頬を撫でる。 だけど心がソレ以上に温かくて、スーッと落ち着く優しい感覚が私を取り巻いていた。