この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-



そのお陰でクエスチョンに陥った私のせいか、今度は妙な空気がこの場を包み出した。



「つーか俺は、のんの言う意味が良く分かんない。

蘭ちゃん蘭ちゃんって…ウチの社長、最愛の婚約者が何なの?」


「――…は?」


「だからぁ、俺が聞いているんですけど」


背後で盛大な溜め息を吐き、いかにも呆れている祐くんには知らぬフリをするとして。



「ら、蘭さんは…」


「あのなぁ…ウチの社長、のんも知ってるだろ?

蘭ちゃんは、ソイツ――拓海の大切な婚約者だって言ってんの」


いやいや、ちょっと待って下さい――


何ですか、サラッと言い流しされてもパニックですから。


悔しいくらい流れていた涙ですら、あまりの驚きようで枯渇してしまった。



だって私は…アナタの婚約者だとばかり思っていたのに。


じつは東条社長の婚約者さんって、驚嘆なオチはアリですか?



「そもそも、何で蘭ちゃんと面識あるわけ?」


「そ、それは…、お店のお客さんで」


「へぇ…、ソレでか――」


この調子で進められると、まるで取り調べを受けている被疑者のようだ。