満月の日のことだった。
俺は恋をした。

そいつは綺麗な黒髪で、誰もが振り向くような美人。そして男だ。
満月のその日に俺はあいつとすれ違った。
それだけだったのに、一目惚れしてしまった。
満月に照らされる透き通った肌。…思わず振り返るとそいつと目が合った。
「…ぁ」
勝手に声が出てしまい、恥ずかしかった。
そんな俺を心の奥まで見透かすような漆黒の目で見つめて、不思議そうに去って行った。
…もう一度会いたい…
それだけを思いながら毎日外に出かけ、あいつを探し回った。
名前も知らない。
そればかりか、あいつは人間なのだろうか。
月から降りて来たかぐや姫なのではないのだろうか…
もう会えないのか…?
そう思うと心が張り裂けそうで。



そして、次の満月の夜だった。
(…)
俺は何かに操られるかのように、外にでた。
「…」
(あれ?俺…)
自分が前にあいつに会った場所に向かっていると気付いたのは、月光に照らされたあいつを見た時だった。
「…」
見とれている俺に気付いたあいつは、少し戸惑った様子だったが、
「来てくれると思った」