「きっと、俺のたどりついた答えにクルーエルも近いうちに気づかされる。そもそも、クルーエルという名前すら、そのまんまだ。神繰りの子……生贄だよ」

『どうすんだよ。じゃあ本当の敵は神とでも?』

「神はあくまでも味方だ。この世界を創ったからには守る義務があるからな」

ラディウスは王都を眺める。

「守ろうと思った。半年前まで。あと、今も。だが、奇跡というのがあるのなら、俺はのうのうと生き続けて、クルーエルを助けることをできるかもしれない」

そして、この世界、フェアルーンも。

『今さら、どっちか欠けなきゃいけないなんて言われても困るよな。絶対、負けるなよ』

「当たり前だ。神の力が必要になる事態は避けたい。兄様が召喚をしなくても、闇の幻獣王がフェアルーンを壊せなくなったわけじゃない」

死ぬことも許されないのなら、勝つしかなくなった。

「ヘル。頼みたいことがある」

『なんだよ』

「幻獣界で、俺が王に名前を貰った後、俺の記憶を姉様と兄様に見せてくれないか」

『いいよ。どれ?』

「15の時の記憶なんだが……」

しばらくして、ラディウスーと呼ぶクルーエルの声が聞こえた。
ラディウスは声のした方に歩き出したが、猫はテラスの上に飛び乗り、そこに留まった。

『帰ってこいよ……そうじゃないと、むくわれない』

猫はそう呟くと、ラディウスの行った方とは真逆の道からテラスを出て行った。