「坊ちゃん。それは彼女達を守ったのでしょう」
「はあ?何のためにだよ」



冷えた身体を湯船に浸からせ、濡れた髪をタオルで拭いている時。後ろから執事の田中が姿を現す。



「坊ちゃんに好意をお持ちになった彼女達の気持ちを尊重したのでしょう。これ以上彼女達が坊ちゃんにお嫌われないように」
「…そんな事されなくても付き纏う女は嫌いだけどな」
「まあ、そうおっしゃらずに…。好意が時には武器と化してしまうけれど、その重さに比例するものです。その重さを悟った岸本さまは坊ちゃんの名誉も守ったのでしょう」
「……意味わかんねぇ」



名誉?を守っただと?あの女がオレのために?…それこそ有り得ないだろう。
でも、もしそれが本当だったら……。何か……顔が緩む。



「はあ?水かけられて勘に障ったからキレてかけてやっただけだけど?」
「……ちょっとまて。じゃあ、なんでオレを止めたんだ?」
「それは、…ムカついたから」



……おい、オレの純情を返せ。ほれ、見ろ田中。こいつはこういう女なんだよ。



「本当可愛くない女」
「あんたは面倒くさい男だけどな」



けど、オレに意見言う女なんておまえくらいで充分だけどな。ありのままで素のままで。



「あ、言い忘れてた。……昨日はありがとう、ハル」
「……はあ?」