桜の葉

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「……そんなコト、無いと思うぞ。」


急に、背後から声がして。
振り返ろうとしたアタシは、ふぁっと抱きしめられた。


「泣き顔…俺は見たいけど…見られたくないんだろ?」



優しい声の主は……


「倉石…。」




アタシは、慌てて、涙でくしゃくしゃな顔を両手で擦った。
…恥ずかしい。


「葉は、まだ目を覚まさないの?」


アタシは、コクッと頷く。

涙は止まったけれど、アタシの顔はきっと酷いコトになっているはず。


「振り向かなくて良いから、少しだけ許して?」

倉石は、ギュッと…抱きしめる力を強くした。




「…朔良が無事で良かった。」

倉石が喋ると、少し熱い息が、アタシのうなじに掛かる。

倉石は、本当に…本当にアタシを心配してくれたみたいだ。


触れてる場所が、温かい。
アタシの鼓動…

多分少し速いよ…。





「……どうして、あそこに来たの?」


アタシは、アタシを抱きしめてる手に…そっと触れる。

大きくて、少しゴツゴツした手は、葉とも…昔の「光」とも違う。



「呼んだだろ?」






倉石は、フッ…と小さく笑いながら答えた。


「……呼んでないょ。」



アタシは、手を離す。




「呼んだよ?『ヒカル、助けて』って。」

「倉石のコトじゃないし。」


倉石は……
アタシから離れた。




「うん。解ってる。…でも、俺は、『ヒカル』の代わりで構わないから。」


アタシは、顔が酷いコトも忘れて振り返った。

倉石は、ニコッと優しく微笑んで。



「同じ『ヒカル』でLucky」



なんて言いながら…
倉石は、アタシの顔を親指で軽く拭いてくれた。


「これからは、俺に、朔良を護らせて?」