「翔太はさ悪気はないんだけど、彼女が出来てもともだちの付き合いも大事にするやつだから、それで元カノとちょくちょくケンカしてたんだ。」
七海は淡々と話しはじめた。
翔太はともだちが多かった。男に限らず、女友達も。
帰り道にともだちの家があれば、いきなり訪ねたりした。
それが女友達の家でもだ。
七海の家にもよく遊びにきた。
翔太は、七海の4歳上の兄や母親とも仲がよく、夕飯までご馳走になることもよくあった。
ひとりっ子の翔太には、兄がいる七海が羨ましく、七海の兄になついていた。

いつものように、翔太が七海の部屋でゲームをしていた時だ、玄関のベルがなった。
七海が玄関のドアを開けると、南高校の制服を着た女の子が立っていた。
ギロリと七海をにらんだかと思うと、いきなり殴りかかってきた。
「キャー!!」
七海の叫び声を聞いて、翔太が何事かと吹っ飛んできた。
「てめぇ何してんだ…って、美雪?なにしてんの?!」
翔太は、美雪に倒されて玄関に座り込んでいた七海の腕をつかみ立ち上がらせた。
自分が盾になるかのように七海の前に立ち、美雪を苛立った目で見た。
「で?何してたんだよ?」
美雪は、バツが悪そうに目線をずらした。
「七海、俺かえるね。こいつ送ってく。ケガなかった?」
うん、大丈夫と七海が小声で言うと、美雪は顔をあげて怒鳴った。
「帰らないよ!わたしは翔太の彼女なの!あんた、他人(ひと)の彼氏にちょっかい出すんじゃねーよ!!」
翔太はウンザリした顔で美雪に説明をはじめた。
「汚い言葉遣いはやめろよ。七海はただのともだちだよ。七海の兄ちゃんが新しいゲーム買ったから、よく寄ってやらせてもらってんの。なんか勘違いしてない?」

美雪は、なぜか七海をにらみながら、反論しはじめた。
「うそ!本当だとしても、毎日のように寄り道して、彼女のわたしはほっといて許せない!」

「いやいや、なんで七海の家でくつろぐのを美雪に許してもらう必要があるの?」
と翔太は、髪の毛をクシャとにぎり、美雪を鋭い目線でみた。
美雪はひるまなかった。
「そんなの当たり前じゃん!彼女以外の女と遊ぶなら、全部教えてよ!電話くれればいいじゃない!」
美雪は、自分の主張が正しいとばかりに大声で訴えた。