放課後、みちるは掃除を大急ぎで終わらせ、七海と加奈子に大きく手をふり、下駄箱まで猛ダッシュしていった。

「みちる、すっごい嬉しそうだったねぇ!」

加奈子が、みちるが走り抜けていった廊下から視線を戻しながら、七海に話しかけた。

化粧をなおしていた七海が鏡とビューラーを置きながら、くすっと笑った。

「みちるさ、翔太と初のプリクラ撮るからって、わたしのマスカラ貸してって言ってきたんだよ?」

「えっ!あの化粧っ気が全然ないみちるが?!」

加奈子が七海のマスカラを手にとりながら、驚きの声をあげた。

「そうなの!とうとう、この時が来たんだ!って思ったよ~。だからさ、グロスも塗りなよって言って、無理矢理なんだけど化粧してあげちゃった!」

七海が、みちるの変化を母親のように喜んでいたので、加奈子も感慨無量といったかんじに、しみじみした口調でつぶやいた。

「男は女を変えるかぁ~。みちる、可愛くなったもんね。」

七海はニヤリと笑いながら加奈子の肩に手をおいた。

「加奈子も変わったよ?前は人の話はまったく聞かなかったのに、今はちゃんと聞くようになったし。ちゃんと聞き役も出来るようになったじゃん!」

ひどーい!と、ジタバタしながら加奈子はほっぺを膨らました。

七海は笑いながら、携帯電話を開きみちるにメールをした。

― 右のポケットみて☆わたしからのセンベツ?!ラブ×2なプリクラ待ってまーす(^∀^)ノ なんなら、ちゅーしたプリでもいいよん(笑) ―

同時刻、七海からのメールを読んだみちるが右ポケットを探ると、さっき七海が塗ってくれたグロスが入っていた。

七海の優しさに胸があったかくなった。

「どうかした?」

隣にいた翔太がみちるに聞いた。

「うん、七海からメール。ちゅーしたプリクラまってるよ、だって!」

翔太は顔を少し赤くしながら、何いってんだよアイツは!と、ブツブツ言いながらみちるの手を握った。

みちるはあいた方の右手で、七海にメールを返信した。

― 最初からハードル高すぎ!…でも、がんばります(^з^)-☆ ―