午前中の授業が終わると、加奈子がみちるを呼んだ。

「みちる~、翔太が呼んでるよ。」

胸がドキっとした。
廊下に出ると、翔太が気まずそうに微笑みながら「よぉ」っと小さくあいさつをした。

話しがあると言うと、人気がない理科室に誘った。

微妙な距離を開けて、理科室のどっしりした机によりかかった。

「あのさ、この前のことだけど…」

翔太は視線を落としたまま、話しはじめたが口ごもってしまった。

みちるは、痛たまれない気持ちになり口を開いた。
昨日から伝えようと、何度も何度も頭に浮かべ考えていたことを話しはじめた。

「…翔太、わたし腹をたててるの。」

翔太は唇をきゅっと噛み締めた。

「独りよがりな自分が情けなくて、自分に腹をたててるの。」

「…え?」

翔太が顔を上げて、驚いた顔でみちるを見た。

「わたしあの時、すごく、その、…気持ちがよくてイキそうだったの。」

恥ずかしくて翔太を見れず、顔を背け、話すのを続けた。

翔太が愛おしくて、体をあのままあずけたかったこと。

でも、こんなに早く、体の関係を持ってしまうのが途中で怖くなったこと。

そんな中途半端な気持ちでセックスをしてしまい、心と体の痛みは、全て翔太が悪いんだと思い込もうとしたこと。

「あの後、翔太から何度も連絡が来たのに無視をして、どれだけ翔太を傷付けたか…。
本当に自分勝手だった。ごめんなさい!」

みちるは翔太の方に向き直り、頭をさげた。