「紫乃はいつも頑張ってるもんな」



「いつも?」



「生徒会も、勉強も。

いっつも真剣じゃん♪」



「あなたよりはね」



「ははは、確かに(笑)」





変な人。



いつも私に話しかけてくるこの人は、バカで、おちゃらけてて。



なのに。



本当は知ってるの。



優しい人だってことを。



いつだったのか。



小学生の頃かしらね。



低学年のときはよく遊んでいたけれど高学年にあがり、絡まなくなっていた私たち。



家の方向が一緒だったからたまたま見たのだけれど。




雨の日、川原に捨てられた子犬を泣きそうな瞳で見ている男を見たわ。



触りたくて、でも触ることが出来なくて。



自分の傘を子犬に差し出して走ってゆく姿。