あなたのメール、代行します。

「えっとえっと、体温計、体温計……」


 え、体温計持ってるの? ダメじゃん、何のためのイベントだよこれ。

ていうか、色々バッグから出てきてるんだけど。

ばんそうこう、シップ、消毒液、マスク、包帯、風邪薬……もういいよ、どんだけ出てくるんだよ。

救急セットを持ち歩いてるってすごいな。


「あ、芽衣さん、熱はないから、大丈夫」


「でもでも、もし熱あったら……」


「大丈夫だって。それよりさ、早く映画観ようぜ」


「そっかそっか、大丈夫なんだ。ありがとう」


「ていうか、本当に『君のための物語』でいいの? 一回観たんなら、別のやつがいいんじゃね?」


「ナイトくんは別の映画が観たいの? それならそれなら、別のでもいいよ」


「いや、別のが良いってわけじゃないけど……」


「それならそれなら、『君のための物語』がいいな。私、結城龍之介監督、大好きなんだ」


 ぐはぁ! くっ、まさかかっこつけ監督なんぞに愛を持っていかれるとは……ちきしょう、負けてたまるか!


「ふん、それなら結城龍之介作品を観てやろうじゃねえか。よし、行くぞ、芽衣! ついてこい!」