私はホッと安堵した、すぐ後に
表情を曇らせた。

「アキラさんにだけは・・・ 
 この話はしないでほしい」

「心配しないで、君の事を
 俺は誰にも話さないよ
  
 俺にだって、誰にも話せない
 心の傷がある
 君の気持ちは痛い程に
 分かるから・・・

 アキラには
 気持ちは伝えたの?」

「アキラさんに、私のこの想い
 を告げるつもりはありません
 ・・・
 こんな私の事を誰も愛して
 などくれない」
 
イサオさんは、私の左頬に右手
でそっと触れたその後
スローモーションで叩かれて
いるように軽く掌を滑らせた。

「もう今日で、やめにしなよ
 過去に縛られるのは・・・
 君は何も悪くない
 
 傷を忘れることなんて
 できないけど、その古傷で
 今の自分自身を傷つけること
 はない
 
 過去は過去でしかない・・」