立ち尽くす私に、彼は言う。

「さあ、中に入って座って
 お茶でも入れるよ」
 
「いえっ、請求書を頂いたら
 すぐに帰りますので
 お気遣いは……」

「いいから、座って」
 
彼はテーブルの椅子を引き
私に座るように促す。
 
私は席に座り、彼が注いで
くれた珈琲を頂く事にした。
 
彼は、煙草に火を付けて
黙ったまま何かを考えている
 
私の存在さえも煙草の煙に
掻き消されるように。
 
煙草をくわえる彼の仕草に
私は目を奪われた。
 
「セリ、できた?」

彼は書類の内容を確認して
封筒に入れ、私に渡す。
 
その封筒を預かった私は、もう
用事は済んだので帰ろうと
席を立ったその時

工房のドアが開いて

彼が現れた。