「どうして、知らないふりを」

「さぁ、特に言う必要は無い
 と思った
   
 それに、ぼんやり・・・
 そう、見えただけさ」

イサはきっと、わざわざ
セリナさんが取り乱す事を
伝える必要は無いと判断した
のだろう。
 
イサがあの場で、彼女を
責めれば、彼女はきっと
恥ずかしさのあまり反発
したはずだもの。

翌日、彼はとても素敵な作品
を完成させ、その後の個展は
言うまでも無く大成功。

彼のやり遂げた後の喜びの
表情を見て、私も、とても
嬉しくなる。

穏やかに日常は過ぎて行く。
 
私は、セリナさんの後を
引き継いで、イサの仕事を
手伝っていた。