彼は今、個展に出す作品の
最終段階に入っていた。
 
自分の思うとおりの作品に
満足げな様子で、たまに口元が
緩んでいる姿は、たまらなく
愛しい。
 
作業の手も進んでいる。

私は、いつものように眼鏡の
下の彼の瞳に心を奪われたまま
傍でずっと見つめていた。

イサは時計を見た後に、製作
の手を止めた。

「今日は、ここまでにするよ
   
 明日、全ての作品の
 最終チェックとこの作品を
 完成させないと次の仕事に
 差支える
   
 美桜、忙しくてあんまり
 構ってやれなくてごめんな」

そう言って、彼は眼鏡を外した
 
「私の事は、気にしないで
 ここで、こうしてイサの事を
 見つめていられるだけで
 楽しいもの
   
 それよりも、ねえ、イサ?
 
 運転中は、ほとんど
 コンタクトなのに、どうして
 作業の時は、眼鏡なの?」