私は、この喜びの出来事を早く
イサオさんに聞いてもらいたい
・・・

小雨の降る中を急いで彼の待つ
工房へと向かう。
 
雨は次第に強くなり、足早に
駆ける私の目の前で真っ赤な
傘が開いた。

そう、その傘の持ち主は
セリナさんだった。

「ミオちゃん・・・」

雨に濡れる私に気が付いた彼女
は慌てて傘を私に差し出して
くれた。

久しぶりに見るセリナさんは
出産前と何ひとつ変わらない姿
で、スリングに身をすっぽりと
包まれて眠っている赤ちゃんを
抱いていないと、とても
お母さんには見えない程だ。
 
「おめでとうございます」

「ありがとう、今、イサにも
 この子、会わせて来たのよ
 全然、会いに来てくれない
 んだもん・・・」