私は、イサオさんの手を
放してしまった・・・

彼はどこへ向かう・・・

そう、ヨウジの元へと。

イサオさんは母が入院していた
病院の前で車を停めてヨウジが
現れるのを待ち続けた。
 
以前母から、ヨウジがこの病院
で勤めるために地方の病院を
辞め、この街に帰ってきた事を
彼は聞いていたので必ずここへ
奴は、やってくる。

イサオさんは病院へ向かう
彼の姿を見つけて歩み寄る。

「美桜に、何をした?」

「何をって
 愛し合っただけさ」

平然と、そう言い放つヨウジの
頬を力一杯に打つ。
 
ヨウジは切れた唇から出る血を
手でふき取り、冷笑する。
 
そんなヨウジの胸倉を掴み
怒気を帯びた顔付きで
睨みつけるイサオさんの冷酷な
瞳に、ヨウジは戦(おのの)く