彼の心が悲鳴を上げ・・・
悲痛な面持ちになる。
 
イサオさんの、こんな辛い表情
を見たかった訳ではない。

ただ私は自分が傷つくだけでは
事足りなく、彼さえも傷つけて
しまった。

どうしても、どうしても・・・

私は・・・

この胸の激情を、抑える事が
できなかった。
  
罅割れた硝子細工を、私は粉々
に壊してしまった。

「ごめん・・・」

そう言い残し、イサオさんは
病室を出て行った。

廊下で彼とすれ違った母は彼の
涙を見て急いで病室へと戻り
ドアを開けた。
 
ベッドの上で両足を抱えて
泣いている私を見た母は
何も言えずに、そっと
私を抱きしめてくれた。