最初、私はここへ帰ることを
酷く拒んだ。
 
何度も嫌だと繰り返し、俯く
私の頬に、彼はいつものように
優しく手をあて、顔を上げさせ
じっと私を見つめて言う。
 
「俺が一緒に行くよ、ねっ」

彼が私をここへと導いてくれた

だから、今こうして母と妹と
過ごす時間を持つことができた
のだ。

この事で、私は分った事がある

どうして嫌がる私を無理にでも
イサオさんは、ここへ連れて
行こうとしたのか?

それは、きっと、イサオさんと
アキラとの関係が、どう足掻い
ても元に戻る事は無いと知った
から・・・

同じ両親を持つ最愛の弟に
二度とは許してもらえない事実
を受け入れた彼。

その痛みを知った彼は、今なら
まだ修復できる私と母の関係を
取り持ってくれたのだろう。