私は、イサオさんの傍へと
駆け寄った。
 
ハンカチで、彼の切れた唇の血
を拭く。

「イタ・・・痛い」

「ごめんなさい
 消毒した方がいいかも・・」
  
ネックレスを付けて、イサオ
さんの傷を心配する、私を
見つめた長尾さんは言う。

「確か、どこかで会った事が
 あるような・・・
 
 イサ、おまえの彼女?
 
 おまえも、やっと
 亡骸から解放されたのか」

「ああ、やっとな・・・
 
 ナガオ
 今度、ゆっくり飲もう」

長尾さんは、背を向けて
手を振り、停めてあった車に
乗り込み、走り去る。
 
セリナさんを迎えに
行くのだろう。