イサオさんは、理由を知らずに
首を左右に振る。
 
アキラはセリナさんの涙を
そっと手で拭って、彼女の瞳を
見つめて、優しく話す。
  
「セリ、どうしたの?」

私は緊迫している状況を頭では
理解できたが彼女を心配そうに
見つめる、アキラの横顔を
このまま見てはいられない。

私の足は勝手に、工房の外へ
と出て歩いて行く。

工房を出て行く私に、アキラは
気がつくが自分に助けを求める
セリナの手を、振り解く事は
できない。

「俺が行くよ
  
 アキラは、セリの話を
 聞いてやって
 
 俺には話せないらしい」

私の足は立ち止まる事なく
歩き続ける。
 
早くこの場所から離れたい
一心で歩く。

「ミオちゃん、待つんだ
 ミオちゃん・・・」

イサオさんの手が

私の腕を掴んだ。