私がどうして、彼と一緒に
暮す事を躊躇してしまうのか
 
それは、真実を話せない以上
アキラとの未来はない事を
知っているから。

私は、そんなのどうでもいい
じゃんって思う事のできない
人間だ

どんな些細な事でも、胃痛に
なる程に悩んでしまう。

私は、久しぶりに、この工房
へ訪れた。

あれから、何度か私の事を
アキラに変わって、お店まで
迎えに来てくれたイサオさん
と会うことはあったが
 
今日の天気はどうだ、昨日の
テレビがどうだったと、そんな
他愛ない話をしている間に
マンションの前に着き、そこで
手を振り別れた。

工房内には、人の気配は
感じられないが、ここで会う
約束をしていたので、私は
ドアを開けて中へ入る事にした

「イサオさん・・・いますか?
 イサオさん」

イサオさんの履いている靴が
入り口に置いてあったので
彼は居るだろうと、私は
靴を脱いで室内へ入る。