だから、裏切る前に、私に
深い傷を負わせたと言うの?
 
貴方から逃げられない程に酷く
深い傷を。

「ミオ、誰も傷ついたお前を
 愛してなんてくれない
 
 俺だけがお前を愛してる
 
 だから
 俺のものでいて・・・」

抱きしめる彼の腕はどこか
儚げで、その傷に私の傷が
合わさり、同情さえ感じる。

もう、このまま彼と共に
進んでもいいように思えた。

その時、私のドアを叩く音が
響いた。

鍵のかかっていないドアを
開け放ったのは、アキラさん
だった。

彼は、ヨウジから私を奪い返し
彼を睨みつけた。

ヨウジの寂しい瞳に魅入られて
過去に引きずり込まれ、もう
どうなってもいいと感じた
私の心をアキラさんの強く握る
手が現実へと導いてくれた。