彼は、振り返り大きな声で叫ぶ

「さっきの話は嘘・・・
 俺は、女が好きだから」

彼は大きく手を振って
闇夜に駆けて消えて行く。 
 
私は、彼の言葉にまた驚く。
  
一人暮らしで、誰も待ってなど
いない真っ暗な部屋内に入り
鞄を置き、灯りを点ける。
 
私は、ふと、こんな夜遅くに
『女が好きだ』と叫ぶ
彼の事を思い出し

一人、笑みがこぼれた。

私の為に嘘をつき
自宅まで送り届けてくれた
彼の優しさに寂れた私の心が
ほんの少し、温かくなった。