紗英さんが先に聞いてきた。

 だけれども、俺はまたしても声が出ずに下を向いてしまう。

 考えていた来てはいたが、やはり答えが出せないのだ。

 理由は、

「……」

 全く分からない。



 だが、これ以上返事をしないのでは男として、焦れった過ぎる。

 逆にムカついてくる。

 こんなダメな男と付き合うなんて紗英さんには荷が重すぎる。

 彼女にはもっと相応しい男性がいるはずだ。

 そう思って、



「……ごめん、なさい」



 今になって思う。

 俺は男として最低な事を彼女にしてしまった、と……



「そう……ですか……」



 彼女はうつ向いて、後ろを振り向くとそのまま走って視界から消えていってしまった。