~みだれ髪~

 2人だけという気まずい雰囲気の空間に追い込まれることにはどうしても慣れるということはあるまい。



「……すみません」

 心臓の鼓動が早さを増す。

「あの……」

「は、はい!」

「その……あの……」

 今の気持ちを伝えること、そう先輩は言いたかったのだろう。

 だが、ここまできて勇気が出ない俺はやっぱり……



「……怪我は無い、ですか?」



 最低だ……



「あ……はい、大丈夫です」

「……」

「……」



 沈黙が続く。



「「あの……」」



 2人の声が重なる。



「「あ、どうぞ」」



 また重なった。



「クスッ♪」

「……?」

 驚くことに、紗英の口は微笑む。