「あ……
 ……すみません」

 一瞬、紗英さんと目が合ったが、すぐに反らしてしまった。



 そこで彼女の名前が出てきたことにかなりビクリとしたが、紗英さんはまた悲しむような表情をつくったが、すぐに仕事に切り替わる。



 仕事が終わった頃には、もう既に外が夕闇に染まっていた。

 その日も紗英さんと口をきくことなく、俺は詰まる思いで帰り道を歩いていると、後ろから声をかけてくる人がいた。

「ちょっと待ちなさい、和哉」

 俺はその声にある人の顔が思い浮かび、振り返ると思った通り、

「先輩?
 どうしたんですか?」

 生徒会の先輩であり、会計役員の先輩だ。

「あなたに聞いてておこうと思って……
 あの子のこと、どういう風に思っているわけ?」