塾帰りの12分


その時、電車が大橋駅のホームに入り始めた。


兄貴はシルバーシートに座るばあさんの方をちらっと見やってから、こちらに向き直った。

「おばあさまと一緒に先に帰ってるから、おまえ、芦川さんを送ってこいよ」

「は?」


またおせっかいなこと考えてんのか?

そう思ったが、違う理由だった。


「少し遅れて帰って来い。
もう一度ちゃんとおばあさまと話したいんだ」

「……わかった」


そういうことなら仕方ない。


俺は電車を降りるばあさんと兄貴を黙って見送った。