それなのに、また距離を縮められて聞かれた。
「名前は?1年?」
うーん、どうしよう……。
あんな姿見られて、できればもう顔を合わせたくない相手だから、名乗らずに済ませたい気もするけど。
でもなぁ。
同じ高校で、塾も同じで、しかも同じホームにいるってことは、電車の方向も同じってことでしょ。
これからも、顔を合わせる確率は高いよね。
私は諦めて笑顔を作り、素直に答えた。
「1年の芦川聡美です。
あの……先輩、ですか?」
「ああ。
2年の北見孝太郎(キタミコウタロウ)」
「北見先輩……。
さっきはありがとうございました」
私は改めて頭を下げた。


