「聡美、ほら、次入ってないじゃん」 歌い終えたオクがにやけた顔で私の膝に歌本を載せた。 その時、内線電話が呼び出し音を鳴らし始めた。 私は立ち上がり、受話器を取った。 「はい。 ……いえ、延長は結構です。 すぐ行きます」 受話器を置くと私はオクに告げた。 「オク、時間だって。 行こう!」 「え、まだ時間大丈夫だろ? 延長しようぜー!」 「ううん、夕飯までには帰るって言ってきたから、私、もう帰らないと」 そう言うが早いか、私はバッグをつかんで部屋を出た。 「えっ、ちょっと聡美ー!」