塾帰りの12分


「孝太郎」

「はい」


俺は兄貴のまねをして、かしこまって返事をする。


「少しは偏差値は上がったのかしら?
秀成学園は良家の女子が通うにはいい高校かもしれないけれど、毎年東大への合格者はほんの数名ですからね。
もともとあなたは修太郎や啓太郎(ケイタロウ)とは違うんだから、人一倍勉強しないと。
ねえ、葉子(ヨウコ)さん?」


祖母は母に顔を向けた。

母はかろうじて微笑みながら答えた。

「はあ……
でも、私も寛(ヒロシ)さんも子供達はみな、自分の好きな道を進めばいいと……」


母がそう言いかけると、祖母はすぐさまそれをさえぎった。