塾帰りの12分


兄貴は如才なく祖母と会話を交わしていたが――


「そうそう、修太郎」

「はい」

「園村さんのとこのお嬢さんのことなんだけど、その後も仲良くお付き合いしてるのかしら」


祖母のその質問に、兄貴は一瞬固まった。

祖母は笑顔で兄貴を見ている。


「ああ、ええ、まあ……」

兄貴の意識がこちらをうかがっているのがわかったが、俺は表情を変えずに立っていた。


「そう。
それならいいの。
きちんとしたおうちのお嬢さんですから、大切にね」

「はい……」


兄貴が神妙にうなずくと、祖母は俺の方をちらりと見た。


来るぞ。


そう思ったとたん、固い声が俺を呼んだ。