塾帰りの12分


俺が顔をしかめると、「そんな顔するな」とでも言いたげに、兄貴が背中をポンポンと軽くたたいてきた。


それでもむっつりした表情を変えられないまま、俺は応接間に入った。




「おばあさま、いらっしゃい」

兄貴は愛想よく祖母に微笑みかけた。


その横で俺は祖母と目線を合わせずに会釈だけした。


祖母はにこやかに兄貴を見上げ、俺の方は見ようともしない。


まあ、毎度のことだ。




「修太郎(シュウタロウ)、大学の方はどう?」

「楽しくやってますよ」

「そう。
楽しいのもいいけれど、遊んでばかりいてはいけませんよ」

「ええ、わかっています」