俺が顔をしかめると、「そんな顔するな」とでも言いたげに、兄貴が背中をポンポンと軽くたたいてきた。
それでもむっつりした表情を変えられないまま、俺は応接間に入った。
「おばあさま、いらっしゃい」
兄貴は愛想よく祖母に微笑みかけた。
その横で俺は祖母と目線を合わせずに会釈だけした。
祖母はにこやかに兄貴を見上げ、俺の方は見ようともしない。
まあ、毎度のことだ。
「修太郎(シュウタロウ)、大学の方はどう?」
「楽しくやってますよ」
「そう。
楽しいのもいいけれど、遊んでばかりいてはいけませんよ」
「ええ、わかっています」


