塾帰りの12分




◆北見孝太郎side



玄関を開けると、応接間の方から話し声が聞こえた。


足元を見下ろすと、美しい草履がそろえてある。



……あの人か。



俺は「ただいま」の声を飲み込んで、その場に立ちすくんだ。


このままもう一度外に出て少し時間つぶしてくるか……


そう思った時――




「ただいまー」


後ろにいた兄貴が大きな声を上げた。