◆北見孝太郎side 玄関を開けると、応接間の方から話し声が聞こえた。 足元を見下ろすと、美しい草履がそろえてある。 ……あの人か。 俺は「ただいま」の声を飲み込んで、その場に立ちすくんだ。 このままもう一度外に出て少し時間つぶしてくるか…… そう思った時―― 「ただいまー」 後ろにいた兄貴が大きな声を上げた。