「……永海邦人。」


「覚えていただけたんですね。」


忘れられるはずがないじゃない。


私の嫌いな、婚約者。


私に断る権利なんか、無かったんだから。



なんなのよ!



「1人で外に出てきてください。


お話ししたいことがあります。


私はもう、あなたのホテルの側にいるんですよ。」


相変わらず、感情のこもらない声。


きいてるだけで、いやになる。


「…………いやよ。」


今外になんか出たら。