私は試着室の前で足を止める。 部屋から聞こえてくる声に、思わず聞き入ってしまった。 「だんな様、本当にこれでよかったのかしら。」 この声は、お手伝いの伊藤さん。 父様がどうかしたのかな? 話に興味をもった私は、さらに耳を近づける。 「仕方ないわよ。 なんでも、強引に決められちゃったみたいよ。 ……光沙様のお見合い。」 ………えっ? 今、お見合いって言った?