声をかけた瞬間、彼女の手が止まった。 結び目をつかんでいた手の力が抜ける。 ぶらんと垂れ下がっていた首に力が入る。 彼女の顔を覆っていた長い髪が、少しずつ彼女の顔から払われていく。 顔をあげきった時の彼女の表情は、まさに授業中に居眠りを指摘された時のような、“キョトン”とした表情だった。 こんな状況で話しかけてきた私を怪しむでもなく、純粋な子供のような目。 今の状況には不釣り合いなほど、彼女の瞳は澄んでいた。