この言葉は、私の荒みきった心にピタッと張り付いて。 すき間を冷たい風から守ってくれたのも確か。 すき間を埋めてくれたわけではないけれど、寒いおもいをしなくてすんだんだ。 真幸を忘れられたわけではなかったし、邦人さんに対する嫌悪感が消えたわけでもなかったけど。 少しだけ、感謝したんだ。 歩調を早めながら、私は財布の中を確認する。 現在の所持金。 3627円。 邦人さんは有名な茶道の家元のお坊っちゃん。 こんなので、足りるはずがない。