私の家は、もう天貝家のものじゃないんだ。 私はその場で、動けなくなった。 あのあとの事はあまり記憶にない。 覚えていることは、そのあと連れていかれた永海のお家と。 私の頬をつたう、冷たい水滴の感覚だけ。 その時、もう引き返せないと感じたんだ。 目の前の信号が青になった音と同時に、人が動き出す。 大きな人の流れにのって、ゆるゆると進みだす。 人だかりに流されながら横断歩道を渡りきったところで、ケータイを確認した。