桜の木が、儚く風に拐われそうな花びらを必死に繋ぎ止めてる。


その桜を弄ぶように、風はすべての方向から、花びらを拐っていく。


風の強い4月。


真幸と離れてから、もう3年がだった。


この3年の間、一度も真幸とあってない。


真幸と離ればなれになってから、私は邦人さんの婚約者として生きてきたんだ。


あのあと、家に帰ったら、驚くほど何も変わってなかった。


すべて、真幸と逃げる前のまま。


よそよそしい清掃員さん。


私から遠ざかるメイドさん。


…………何も語らない父様。