シャッター


朝飛のその表情は光希が初めて目にしたものだった


「けっこう精神的にいよいよ苦しくなったとき、…そのときからなんや。写真に興味持ち始めたん」


「…そうなんだ」


光希は朝飛を見つめて、相づちをうつ


こうして考えると朝飛が自分のことを話すのは初めてのことだった


朝飛は再び光希に視線を移して、笑った


「だって写真はさ、綺麗に撮れば綺麗なまんま、ずっと残るやろ?昔っから、あんま綺麗なもん見慣れてへんかったからやと思うけど、いつのまにかどっぷり写真にのめり込んでたんや」



一生懸命話す朝飛を見て、光希は微笑んだ



「そっかぁ」


「せやから、モデルさんのこと自然とか風景って言ったんは…。上手く言葉にできへんけど、」


光希は言葉を探す朝飛に首を振ってみせた

「もういいよ」


「せやけど…、ほんまこれだけは知っといてほしいねん」


朝飛は真剣な表情でそう呟いた



「なに?」


「今でもどうしてあの時、モデルさんのことあんなに撮りたいと思ったのか、わからへんのや。せやけど、初めて人にモデルやってもらって、ほんま良かった。モデルさんで良かった」


照れたようにそう言う朝飛に光希は心から嬉しくなった


心がポカポカと体温を持っていく


「ほんま感謝してる。こんな俺でも、ちゃんと人と初めて向き合えた気ぃした」

光希は思わずまた涙が溢れそうになった


鼻の頭がつーんと痛くなった


それを隠すために下を向いた

「あたしも。感謝…してる。ありがとう。モデルもまたやりたい」