シャッター

モデルさん


それから朝飛は光希をそう呼ぶようになった


光希にとってそれは恥ずかしいし、クラスの中で呼ばれるとかなり焦ったがいつのまにか定着してしまった


最初は名前でいいと訂正したのだが、慣れてしまったらしい





「モデルさん、こっちやこっち」



日曜の昼下がり、山道を抜けて連れてこられたのは、小さな橋の手前だった

ここらへんは森林が多くて観光地になっている


夏休みには家族連れや子供たちの団体が旅行にくる


「久しぶりにきた」


光希が呟くと朝飛は目を丸くした


「こんなええとこ、来ぃひんの?地元なのに?」


「地元だと逆にこんなとこで遊ばないよ」


「そんなもんやねんなぁ」


朝飛は勿体なさそうに辺りの自然を見渡した


光希はそんな朝飛を横目にクスリと笑う


「どこで撮るの?」


「橋」


朝飛はそう言って、橋を指差した


光希は血の気がひいた


「やだ」


小さく首を振って橋を見つめた


朝飛は顔をしかめ、不思議そうにする


「なんであかんの?」


光希は少し答えるのを渋った


橋を見渡し、鳥肌がたつ


「怖いんだもん」