シャッター

「いいとこ見つけて、ずっと写真撮ってたんや」


「え?それで休んでたの?」

光希は驚いて、呆れてしまった


そこまで写真が好きな人に会うのは初めてだった



「ほんまラッキーや。引っ越してきたとこはええとこやし、モデルも見つかるしな」

朝飛はそう言って、ニカッと白い歯を見せた



光希は照れたのを隠すように下を向いた



「撮ってええかな」



朝飛は首に下げていた黒い大きなカメラを持って言った



「今?」


「そうや!何か用事あるん?」



「…ないけど」


それを聞いて朝飛は嬉しそうにした


「決まりやな」






土手を下りると朝飛は深呼吸した


風が朝飛の癖毛を撫でる


朝飛はおもむろにカメラを持って光希に向けた


「あたし、どうすればいいの?」


カメラを向ける朝飛に光希は困ったような顔をした



「普通でええよ」


光希は普通といわれて逆にこまった


立ったまま固まる


そうすると朝飛はレンズから目を離して、顔をしかめた


「固いねん。自然でええって」



「ええ…、普通にしてるよ」


光希は情けない声を出す


「カメラ意識せんで、いつも通りでええ」


光希はそう言われて自分なりに自然にしてみた

すると朝飛はカメラを向けて撮り始めた