『綾。全てが繋がった。』


『聡、どこへ行くの?』


『慎一のところ。絶対連れ戻してみせる。』


慎一の家に着くと、裏口に回り込み二階に上がり、昨日と同様窓を叩いた。


それに気づく慎一。窓を開ける。


「なんだよ聡、しつこいな」


「全部、聞いた」


そう言って靴を脱ぎ、中へ入る聡。動揺する慎一。


「全部って、何を?」


「とぼけんな。お前がやめる理由だよ」


「だから、何?僕の考えは変わらないよ」


「お前、本当にそれでいいのかよ?」


「え?」


じっと慎一を見つめる聡。目をそらす慎一。


「仕方ないよ……」


「仕方なくねぇよ。いいか、よく聞け。親になんて言われたか知らねぇけど、就職なんかいつでもできんだろ。今だよ。音楽は、今しかできねぇんだよ。親孝行だったら、年取ってからいくらでもやればいいじゃねぇか」


「そんなことわかってるよ」


「だったら」


「じゃあどうしろって言うんだよ!」


突然怒鳴り声を上げる慎一。


「……実は、関東大会の日……お父さんが、会社クビになったんだよ」


「え」


驚いて目が点になる聡。


「僕が働かなきゃ……どうやって生きていくんだよ?」


「それ……本当か?」


「うん。その通知もあるよ。最初は、僕を説得するために嘘ついてるんだと思った。でも……違った」