その行動に驚いた竜太と聡は、塞いでいるドアの力を緩める。


その途端、外から何人かの社員が突入してきた。


「どうしました?」


慌てて駆け寄る社員たち。それと同時に和樹は部屋から出て行った。


「お、おい、和樹!」


和樹に続く竜太。部屋に残った聡は、和樹の父の前へ行った。


「あの、慎一は……それで、納得したんですか?」


聡が尋ねる。


「いや、あの子は納得しなかった。だから、ご両親に説得していただいた。採用の面接はあさってだ、だからどちらかを選ばなければならないとね」


社員たちの手を借りながらゆっくりと立ち上がって言う。


「そうですか、わかりました……和樹の暴力、お詫びします。でも、アイツの気持ちもわかってやってください」


そう言って頭を下げると、聡も部屋から出て、ビルの外へ向かう。


外には、竜太と和樹の姿があった。


「どういうことだよ、和樹?」


竜太が聞く。


「俺は、ずっとあのバカ親父に会社を継げって言われ続けてたんだよ」


「俺たち、そんなこと一言も聞いてなかったぞ?」


「変に気を遣われんのも嫌だったからな」


少しの沈黙が走る。しばらくして、聡が言う。


「悪ぃ、俺今日、練習休むわ」


自転車にまたがる聡。


「おい、どこ行くんだよ?」


竜太の問いに答えず、聡はペダルを漕ぎ出した。